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「営業職」に残業代を支払う必要はあるのか?

Q. 取引先回りを行う営業職の社員から、残業代を支払ってほしいとの要望が出ています。 本人によると、日々営業報告書および翌日の資料を準備しなければならないため、出先から帰社せずに喫茶店等で夜遅くまで資料の作成や整理を行う状態が続いているということです。 会社としては、毎月80,000円の営業手当を支払っており、入社の際にこれが残業代に充てられるものと説明を行っております。 また、営業職は売上や利益に応じて給与を支払うものであり、ダラダラと長時間働いたからといって、残業代を求めてくるというのはとんでもない話だと考えております。


A. 営業職は仕事の成果に応じて報酬を決めるもので、残業したからといって残業代を支払う必要は無いとお考えの方は、会社の側にも働く側にも多くいらっしゃいます。 しかしながら、営業職だからといって、世間でそのような慣行があるからといって、残業代の支払いを免れるものではありません。労働契約による所定労働時間を超過した労働を行うのであれば、その分の残業代を支払う必要があります。 ただし、営業職に残業代を支払わなくて良い「ように見える」場合があります。 一つ目は、営業手当などが固定残業代として支給されており、その範囲で残業代の支払いを行っていないパターンです。二つ目は、事業場外のみなし労働時間制の対象となっており、労働時間の計算を行っていないパターンです。外注であり、そもそも労働者ではない場合には残業代を支払う必要はありません。 しかし、給与体系が歩合給というだけであれば、残業代を支払う必要はありますので、注意が必要です。


1.営業職に残業代を支払わなくて良い「ように見える」ケースとは。


① 営業手当などが固定残業代として支給されている場合
営業職に営業手当を支給する代わりに残業代の支払いを行わないという取り扱いをしている会社はよく見られますが、多くの会社で漠然と営業手当は残業代に代わって支給するものだと定めているだけで、とても残業代と認められる状態ではありません。 それではどうすればいいのかというと、営業手当を基本給と明確に分け、何時間分の残業代の支給に代わるものであるかを労働契約や賃金規程において明示する必要があります。

・営業手当を残業代の内払いとして労働契約に定める場合の例
 基本給 220,000円
 営業手当(残業代の45時間分に相当) 80,000円

たとえば労働契約に規定された月の営業手当が80,000円で45時間のみなし残業時間に対応するものとすると、実際に1分も残業を行わなくても、あるいは40時間行っても、80,000円の営業手当を支給することになります。運用の際によく勘違いされているのが、月の残業代は営業手当の80,000円ぽっきりでこれ以上はびた一文払わないというような取り扱いです。実際の残業代が営業手当の額を超えた場合にはそれこそ1円単位で残業代を支給しなければなりません。

② 外回りの業務を行う営業職の場合
外勤の営業職など労働時間の把握が難しい業務については、「事業場外のみなし労働時間制」の対象とし、実際の労働時間にかかわらず、一律に始業時刻から終業時刻まで(労使協定で定めた時間)を労働したとみなす取り扱いを行うことができます。これにより、事業場外で勤務している間については原則として、残業の問題が生じないことになります。 ただし、事業場外のみなし労働時間制の適用となるのは、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難なときとされています。外回りの営業であっても、以下のような場合には労働時間の把握が可能とされ、事業場外のみなし労働時間制の適用とはなりません。

・何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、
 そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
・携帯電話やメールなどによって随時上司の指示を受けながら事業場外で労働している場合
・事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、
 事業場外で指示通りに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

営業職に携帯電話を持たせていても、会社からの指示や連絡のために通常使うものではなく、取引先または突発的な事情による会社との連絡のために使うのであれば、これに該当しないものとされています。つまり、事業場外のみなし労働時間制の適用となるためには、営業職の裁量による勤務であることが必要とされます。 なお、事業場外のみなし労働時間制が適用されれば、残業代が一切必要なくなるということはなく、事業場外の労働時間が労使協定で定めた時間または業務の遂行に通常必要な時間とみなされるということになるのみです。深夜勤務手当、休日勤務手当などは通常通りの計算となります。



2.出来高払いで営業の業務を行わせる場合の労働時間と残業代の取り扱い。


① 自社の営業職の報酬に出来高払いを導入する場合
自社の営業職の給与を出来高払いとする場合、タイムカードや出勤簿、営業記録などで労働時間を把握し、労働基準法に沿った形で給与を計算しなければなりません。完全出来高払い(フルコミッション)であっても同様です。まず、労働時間に応じ、少なくとも最低賃金に相当する額を支払う必要があります。 東京都の場合でいいますと、現在の最低賃金は907円であるため、労働時間にこれを乗じた額が最低限、営業職に支払うべき額となります。 もともと慣行として営業職の労働時間に注意を払うことが少ないとは思うのですが、労働基準法上の義務として、事業主はこれを把握しなければなりません。その上で、残業代の計算は以下の通りとなります。

・完全出来高払い(フルコミッション)の場合
出来高払制によって計算された賃金の総額 ÷ 当該賃金算定期間における総労働時間数

・給与の一部が出来高払い(歩合制)の場合
固定給 ÷ 一年間における一月平均所定労働時間数 + 出来高払制によって計算された賃金の総額 ÷ 当該賃金算定期間における総労働時間数

② 営業の業務を完全出来高払い(フルコミッション)で外注する場合
営業職の中でも、報酬の計算を完全出来高払い(フルコミッション)とする場合、保険代理店のように労働者ではなく個人事業主に外注する体裁をとる場合があります。 労働者でなければ当然、労働基準法の適用外となり、依頼する側は労働時間の計算及び残業代の支払いの義務を免れます。しかしながら、労働者か否かは契約の体裁ではなく実態において判断されるため、請負契約で外注する体裁になっているからといって、安心はできません。 完全出来高払い(フルコミッション)の営業であっても、以下のような場合は自社の労働者として残業時間の計算及び残業代の支払いが必要になる場合があります。

・仕事の内容および遂行方法について具体的な指示命令を行っている
・仕事の依頼、指示を断ることを認めていない
・指定の時間、または指定の場所で勤務することを義務づけている
・代理を立てて仕事を行わせることを認めていない
・営業経費、備品の支給を行っている
・同様の業務を行っている自社社員と比べて同程度の報酬水準である
・他社での業務に従事することを認めていない



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