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シフト制の職場必見!「1ヶ月単位の変形労働時間制」で残業を減らすシフト作成と協定届のポイント

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飲食店や病院、介護施設、小売業など、24時間稼働や土日営業が当たり前の「シフト制」を敷いている職場において、経営者や人事担当者を常に悩ませるのが「残業代(割増賃金)」のコントロールです。 労働基準法では、原則として「1日8時間、1週40時間」を超える労働をさせてはならず、これを超えた分には残業代(25%以上の割増賃金)を支払う必要があります。しかし、来客が集中する週末や、スタッフの手薄な夜間帯に1日10時間労働のシフトを組みたい場合、この原則のままでは毎日2時間分の残業代が発生し、人件費が大きく跳ね上がってしまいます。

このようなシフト制特有の悩みを解決し、合法的に労働時間を調整して残業代を削減できる制度が「1ヶ月単位の変形労働時間制」です。 本記事では、この制度の基本的な仕組みから、最もつまずきやすい「法定労働時間の総枠」と「残業が発生するライン」の計算方法、実務上のシフト作成ルールの注意点、そして就業規則への記載や労働基準監督署への届出の流れまでを徹底解説します。

月ごとの繁閑に合わせて所定労働時間を調整できる「1ヶ月単位の変形労働時間制」の仕組み

「変形労働時間制」とは何か?

 変形労働時間制とは、一般的にどの日も均一(例えば毎日8時間など)である所定労働時間を、実際の勤務状況や業務の繁閑に合わせて、忙しい日は長く、そうでない日は短くと「メリハリ」をつけて割り振ることができる制度です。 この制度の最大のメリットは、あらかじめ所定労働時間を長く割り振った日(例えば「10時間シフトの日」)であれば、たとえ労働基準法の原則である「1日8時間、1週40時間」を超えて勤務したとしても、その設定された所定労働時間の範囲内であれば時間外労働(残業)として扱われず、割増の残業代が発生しないという点にあります。 (※ただし、割り振られた労働時間は、後述する「変形期間の中で平均して週40時間以内」に収まっている必要があります。)

「1ヶ月単位」の変形労働時間制のメリット

 変形労働時間制には「1年単位」「1ヶ月単位」「1週間単位(非定型的)」などの種類がありますが、シフト制の職場に最も適しているのが「1ヶ月単位の変形労働時間制」です。 1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月以内(例えば「毎月1日から末日まで」や「毎月21日から翌月20日まで」など)の変形期間を定め、その期間内の各日に平均して週40時間(特例事業は48時間や44時間)の法定労働時間の総枠の範囲内で、柔軟に所定労働時間を割り振ることができる制度です。

この制度は、1日ごとの所定労働時間の上限が法律上定められていないため(※1年単位の場合は1日10時間等の上限がある)、例えば「当直明けの日は休みにして、当直の日は一気に15時間働く」といった、極めて柔軟な労働時間の配分が可能となります。 また、1ヶ月の中で祝日がある週や閑散期の労働時間を短くし、その浮いた時間を忙しい月末や週末の労働時間に回して平均化することで、全体の残業時間および人件費を大幅に削減する効果が期待できます。

法定労働時間の総枠計算と、残業が発生するライン(日・週・月の特定)の解説

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入しても、「いくらでも残業代ゼロで働かせ放題になる」わけではありません。正しく残業代を計算するためには、「総枠」の概念と、残業を判定する3つのステップを理解する必要があります。

法定労働時間の「総枠」とは?

1ヶ月単位の変形労働時間制において、あらかじめシフトとして設定できる労働時間の合計には「上限(法定労働時間の総枠)」があります。この総枠は、暦の日数によって以下のように計算されます。 【計算式: 40時間 × その月の暦日数 ÷ 7日 】

これに当てはめると、各月の総枠は以下のようになります。

  • 31日の月(1月、3月、5月など): 177.1時間
  • 30日の月(4月、6月、9月など): 171.4時間
  • 28日の月(平年の2月): 160.0時間

なお、常時使用する従業員が10人未満の「商業・映画演劇業・保健衛生業・接客娯楽業」に該当する事業場(特例措置対象事業場)については、週の法定労働時間が44時間とされているため、総枠もこれに比例して拡大されます。例えば31日の月であれば194.8時間、30日の月であれば188.5時間となります。この特例と変形労働時間制を併用できれば、単純に1ヶ月に割り振れる労働時間が約16〜17時間増加するため、サービス業等にとっては非常に大きなメリットとなります。

残業が発生する「3つの判定ライン(日・週・月)」

 1ヶ月単位の変形労働時間制では、日々の打刻時間を単純に足し合わせるのではなく、以下の「日」「週」「月」の3段階で時間外労働(残業)を判定し、割増賃金を計算しなければなりません。ここが給与計算で最もミスが起きやすいポイントです。

  1. 「日」の判定: あらかじめシフトで「8時間を超える所定労働時間」を設定した日は、その設定時間を超えた分が残業となります。逆に「8時間以下の所定労働時間」を設定した日は、8時間を超えた分が残業となります。 (例:10時間シフトの日に11時間働いたら「1時間」の残業。6時間シフトの日に9時間働いたら、8時間を超えた「1時間」の残業。)
  2. 「週」の判定: あらかじめシフトで「40時間を超える所定労働時間」を設定した週は、その設定時間を超えた分が残業となります。「40時間以下の所定労働時間」を設定した週は、40時間を超えた分が残業となります。 (※ただし、すでに「日」の判定で残業としてカウントした時間は二重計上を避けるため除外します。)
  3. 「月(変形期間全体)」の判定: 変形期間における実労働時間の合計が、前述の「法定労働時間の総枠(177.1時間など)」を超えた分が残業となります。 (※ここでも、すでに「日」や「週」の判定で残業としてカウントした時間は除外します。)

このように計算が非常に複雑になるため、導入の際はエクセルでの手計算ではなく、変形労働時間制の計算ロジックに対応した「勤怠管理システム」の活用を強く推奨します。

シフト作成時の注意点(事前の勤務指定と変更の可否)

制度を合法的に機能させるための、現場における「運用上の絶対ルール」を解説します。

シフトは「事前に」作成し、周知することが絶対条件

1ヶ月単位の変形労働時間制を有効に成立させるためには、対象となる期間(1ヶ月)が始まる前に、各従業員の「労働日ごとの労働時間(始業・終業時刻)」と「休日」を具体的に定めたシフト表を作成し、従業員に周知しなければなりません。 「とりあえず休みの希望だけ聞いておいて、日々の出退勤時間は前日にLINEで指示する」「忙しさに応じて柔軟に後で決めよう」といった曖昧な運用は法的に認められず、制度そのものが無効(通常の1日8時間制での計算に差し戻し)となるリスクがあります。

原則として、事後のシフト変更は認められない(変更の可否)

シフト制の職場で最もよくあるトラブルが、「シフトの事後変更」です。例えば、シフトが確定して月がスタートした後に、「アルバイトが急に風邪で休んだから、明日の君のシフトを6時間から10時間に延長してカバーしてくれ」といった事態です。

結論から言うと、月の途中で会社や従業員の都合により、一度決めた所定労働時間の「振り替え」や「変更」を行うことは、原則として認められていません。もし頻繁にこのような変更を行おうとすると、変形労働時間制によらず、法定労働時間の原則(1日8時間、1週40時間)に戻って清算を行わなければならなくなります。 「事前に組んだスケジュールが後から変更となることの多い職場には向きません」し、「基本的に事後に労働日の振り替えを行うことを想定した制度ではなく、頻繁に振り替えが生じる状況であれば、1ヶ月単位の変形労働時間制にはなじまないといえます」。

もし、欠勤者のカバーなどでやむを得ず当初のシフト時間を超えて働いてもらう(あるいは休日に出勤してもらう)場合は、シフト自体を変更してチャラにするのではなく、当初のシフトはそのままにした上で、追加で働いた時間を「時間外労働」や「休日労働」として扱い、適正に割増賃金を支払うのが正しい実務対応となります。

就業規則への記載事項と労基署への届出(労使協定は必須ではないが届出は必要)の流れ

最後に、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入するための具体的な手続きの流れを確認します。

就業規則への記載事項

この制度を導入するには、「就業規則その他これに準ずるものによる定め」または「労使協定の締結」のいずれかが必要となります。実務上は、一度ルールを決めてしまえば全従業員に一律に適用できる「就業規則への規定」によって導入する企業が大半です。(※1年単位の変形労働時間制は「労使協定」の締結が必須ですが、1ヶ月単位の場合は就業規則の改定のみで導入可能です。)

就業規則には、少なくとも以下の事項を明確に記載する必要があります。

  1. 対象となる労働者の範囲(例:「店舗における販売スタッフに適用する」など)
  2. 対象期間および起算日(例:「毎月1日を起算日とする1ヶ月間とする」など)
  3. 労働時間および休日の特定の仕方(例:「各人の各日の始業終業時刻および休日は、前月25日までに作成する勤務割表(シフト表)によって通知する」など)
  4. 法定労働時間の総枠に収める旨(例:「対象期間を平均し、1週間当たり40時間(特例の場合は44時間)の範囲内とする」)
労働基準監督署への届出の流れ

従業員を常時10人以上雇用している事業場の場合、会社には就業規則の作成・届出義務があります。したがって、上記の内容を盛り込んで就業規則を変更した場合は、従業員の過半数代表者からの「意見書」を添えて、所轄の労働基準監督署へ変更された就業規則を届け出る必要があります。これで手続きは完了です。

一方、従業員が10人未満の事業場であって、就業規則を作成していない(作成義務がない)場合には、従業員代表と書面で「労使協定」を締結し、その協定書をベースにした「1ヶ月単位の変形労働時間制に関する協定届」という専用の様式を作成して、労働基準監督署に提出する必要があります。

いずれにせよ、会社内でルールを決めて勝手に運用を開始するだけでは法的な効力を持たず、万が一の労使トラブルの際に「届出をしていないため制度は無効」とされ、過去に遡って莫大な未払い残業代を請求される恐れがあります。届出は確実に行ってください。

まとめ

「1ヶ月単位の変形労働時間制」は、繁閑の波があるシフト制の職場にとって、残業代コストを大幅に削減し、効率的な人員配置を実現する非常に強力な制度です。しかし、その強力さゆえに「事前のシフト確定」や「総枠管理と3段階の残業計算」といった運用ルールは極めて厳格に定められています。 「制度を導入したから残業代は払わなくて良い」という安易な誤解を捨て、正しい計算ルールを理解し、勤怠システムの活用や就業規則の整備を進めた上で、適法かつ効果的な運用を実現してください。

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