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みなし残業制度を導入する際の計算方法とは?

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Q.当社では年俸制の従業員に対し、一律の固定残業代を支払っているために残業時間の計算や残業代の支払いは必要ないと考えていましたが、先日、労働基準監督署の調査が入った際に、まず、労働時間および残業時間の把握は年俸制やみなし残業制度にかかわらず、会社の義務だということで、タイムカードなどで管理および記録を行うよう指導を受けました。 また、固定残業代が何時間分のみなし残業に対するものかを尋ねられ、おおよそ届け出ている36協定通りの45時間と回答したところ、このままでは無効であると指摘を受けてしまいました。 みなし残業についてはどこが問題であったのかよく理解できないため、教えていただけますでしょうか。
A.みなし残業制度とは、月の残業時間数をあらかじめ定めておき、その時間内で、実際に何時間残業を行っても(まったく残業を行わなくても)、その時間数を残業したものとみなす制度です。 これと同時に、毎月の給与支払い時にあらかじめ定めた固定残業代を支払うことになります。みなし残業制度というと、会社が本来従業員に支払うべき残業代をディスカウントするための制度と見られがちですが、実際の残業時間があらかじめ定めた残業時間数より少なければ、むしろ会社が損をする形になります。 あくまで、導入に際しては、労働契約などにより、会社と従業員との(公平な立場による)合意に基づき定めた時間数および金額を定めることが必要となります。御社の場合、その手順を踏んでいなかったことに問題があったといえ、今後もみなし残業制度により固定残業代を支払うのであれば、下記に詳述する労働契約等の定めが必要となります。

1.みなし残業制度を導入するために必要なこととは?

① みなし残業時間と固定残業代の額を明確に分けて記載する

みなし残業制度を導入するためには、原則として、個別の労働契約にみなし残業時間とそれに対する固定残業代の額を定める必要があります。現場でよく見られる間違った取り扱いとしては、以下のような例があります。いずれにしてもみなし残業制度としては無効であり、後から従業員に残業代の支払いを請求された場合、必要ないだろうと思っていた固定残業代の分まで支払うことになってしまいます。

×よくある間違いの例①
【契約書の記載】
基本給 300,000円
※口頭で残業代は基本給に含まれると告知していた

×よくある間違いの例②
【契約書の記載】
基本給 300,000円(固定残業代を含む)

×よくある間違いの例③
【契約書の記載】
基本給 300,000円(固定残業代30時間分を含む)

×よくある間違いの例④
【契約書の記載】
基本給 230,000円
固定残業代 70,000円

みなし残業制度を導入するためには、基本給と固定残業代を明確に分け、何時間のみなし残業時間に相当するかまで、定めておかねばなりません。

正しい例①
【契約書の記載】
基本給 230,000円
固定残業代(30時間分)70,000円

正しい例②
【契約書の記載】
基本給 300,000円
(うち70,000円分は月に30時間分の時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日勤務手当の合計に相当し、実労働時間および手当がこれに満たない場合でも支払うものとします)

② みなし残業時間と固定残業代を設定する際の計算方法

36協定によって社員に残業させることのできる時間は厚生労働省の基準により、月に45時間までとされており、それに合わせ、みなし残業時間を45時間として固定残業代の計算を行うケースはよく見られます。特別条項により労働時間が45時間を超えることを見込み、45時間以上のみなし残業時間を設けることも一応可能ですが、最近の裁判において長時間の残業(月に83時間)を前提とした労働契約は公序良俗に反し無効とされた例もあり、45時間を上回ったみなし残業時間を設定するのは避けた方が良いでしょう。 実務上では労働契約を締結する際、総支給額から固定残業代を逆算するケースが多いため、そのための方法をご説明します。

例 )基本給300,000円にみなし残業時間45時間分の固定残業代を含めて支払う際の計算
※この方法はあくまでみなし残業代を簡易に算出するためのものであり、最低賃金額の正確なチェックについては計算後の基本給を所定労働時間で割ったものにて行ってください。

【計算の前提】
基本給 300,000円
月間平均労働時間 176時間(22日勤務)
みなし残業時間 45時間

【残業時の時間給の算出】
まず、45時間残業した場合の時間給を算出します。
この場合の時間給が都道府県の最低賃金を下回ってはいけません。
300,000÷(176+45×1.25)≒1,291.7円

【45時間分の残業代を計算】
次に、時間外労働の割増率として、1.25倍します。
1,291.7×1.25≒1,614.6円
そして、時間数を掛けます。
1,614.6×45=76,657円

【端数を切り上げして調整】
実際には休日労働、深夜労働などで割増率が1.25倍を超えることがあるため、これを考慮して10,000円未満(または1,000円ないし5,000円未満)を切り上げ、ここではみなし残業代を80,000円としました。

【計算の結果】
基本給 220,000円
固定残業代(45時間分)80,000円

2.支払う給与額はそのまま、みなし残業を導入することができるか。

① 固定残業代を基本給の中に入れ込むか、上乗せする

残業を行わせるニーズがある、しかしトータルの人件費は決まっていて、今支払っている以上に支払いを増やすことができないような場合には、新たに固定残業代を設定し、今現在支払っている基本給の中に入れ込む方法が考えられます。 しかしながら、この方法をとると固定残業代を入れ込んだ分、基本給が目減りし、労働条件の不利益変更となってしまうため、労働者側の同意を得ることが必要となります。そこで、可能ならば基本給の昇給分を原資とし、今支払っている基本給に新たに固定残業代を上乗せして支払うこととします。これにより、労働条件の不利益変更が生じないこととなり、労働者側の同意を必要とせず、みなし残業制度を導入することが可能となります。なお、一回の昇給で目指すみなし残業時間分の原資を捻出できない場合は、数年(数回)がかりで順次固定残業代をアップしていくことで対応します。

a. 固定残業代を基本給に入れ込むケース
→労働条件の不利益変更が生じているため、従業員の同意が必要。

固定残業代を基本給に入れ込むケース
 
b. 固定残業代を新たに上乗せして支給するケース
→労働条件は利益的に変更されているため、従業員の同意は不要。

固定残業代を新たに上乗せして支給するケース
 

② 固定残業代を基本給に入れ込むケースではデメリットが生じることも

求人票にはみなし残業制度がある旨が記載されていなかったのに、実際には固定残業代が基本給に込みになっていたというような認識のズレが、最近は「虚偽求人」とも言われるように問題となっており、ハローワークで求人を行おうとすると、みなし残業時間および固定残業代の金額を分けて明記するよう指導を受けることになります。しかし、固定残業代を分けて表示すると、その分基本給の部分が低く表示されることになり、同業他社と比較して給与が安い印象を与えるなど、採用がスムーズにいかなくなる場合があります。とりわけ、元々の基本給が低い場合には固定残業代の占める割合が大きく見える(※)ため、その傾向が顕著です。残業を行わせるニーズはある、しかし、人件費を余分に出すことができないというケースにおいて、固定残業代を基本給に入れ込む手法は確かに有効なのですが、単純に人件費(残業代)の削減だけを目的として行うと、求人の際に求職者から敬遠されたり、従業員のモチベーションが低下するなどの弊害が生じることもあるので、その際の影響を考慮する必要はあります。

※ 基本給が東京都の最低賃金(958円)並みのケース
【契約書の記載】
基本給169,000円
固定残業代(45時間分)55,000円

 
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執筆者 社会保険労務士 山本多聞
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