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専門業務型裁量労働制の導入で残業代をカットすることができるのか?

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Q.当社ではシステムの受託開発の業務を行っておりますが、プロジェクトの遅れやメンバーの欠員などにより、しばしば残業が発生し、相当の人件費がかかっている状況です。人件費を削減するために、社内でプロジェクトの進捗管理を徹底するとともに、外注の活用などを考えておりますが、同業他社で行われているように専門業務型裁量労働制を導入し、残業代をカットすることは可能でしょうか。
A.専門業務型裁量労働制を導入することで、結果的に残業代を削減することは可能です。また、あくまで残業代の削減を追求するというのであれば、みなし残業(固定残業代)制度と併用することで所定休日の勤務に対し、その範囲で残業代を支払わないような扱いも可能となります。しかしながら、それは御社の業務が実態として、「会社側が業務遂行の手段および時間配分の決定等に関して具体的に指示をしない」下記一覧の業務にマッチし、従業員代表との労使協定を労働基準監督署へ届け出ること(みなし残業制度を導入する場合は、さらに個別の労働契約における合意)が前提となります。専門業務型裁量労働制は本来的にはデザイナーやコピーライターなど、成果物が上がって来さえすれば机に向かっていなくても良いような「ノマド的」業務に向き、仕事の進捗を上司が管理する必要のあるエンジニア系の業務には適さない場合があると考えます。

1.専門業務型裁量労働制の対象となりうる業務とは?

専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、業務遂行の手段および時間配分の決定等に関して従業員の裁量に委ね、上司が具体的に指示をしないもののうち、以下の業務(※)となります。専門業務型裁量労働制は残業代の削減を目的として安易に導入されがちですが、従業員が行っている業務が対象となるかどうかは残業代の計算に大きく関わるため、裁判など問題化した場合には非常にシビアに判断されることとなります。たとえば、上司が仕事に関して細かく指示をおこなっていたり、特定の時間に出勤するよう命令を行っていたりすると、業務を従業員の裁量に委ねているとは言えず、専門業務型裁量労働制の対象とはなりません。また、主として行っている業務が下記から外れる場合、やはり専門業務型裁量労働制の対象とはなりません。導入に際してはご自身のみで判断なさらず、社会保険労務士など専門家に相談されるか、労働基準監督署へ問い合わせることをお勧めいたします。

※専門業務型裁量労働制の対象と「なりうる」業務
①「研究・開発職」
→新商品または新技術の研究開発等の業務、人文自然科学の研究の業務。
②「システムエンジニア」
→情報処理システムの分析または設計の業務。プログラマーやデバッカーレベルの業務は含まれない。
③ 「記者、編集者、取材スタッフ」
→新聞・出版の記事の取材・編集、またはテレビ番組制作のための取材・編集の業務。記者に同行するカメラマンや技術スタッフ、単なる校正の業務は含まれない。
④「デザイナー」
→衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務。考案されたデザインに基づいた、図面の作成、製品の制作等の作業的業務は含まれない。
⑤「プロデューサー・ディレクター」
→テレビ番組、映画、興行制作のプロデューサー・ディレクターの業務。
⑥「コピーライター」
→広告、宣伝等における商品等の内容、特徴等にかかわる文章の考案の業務。
⑦「システムコンサルタント」
→事業の運営において情報システムを活用するための問題点の把握またはそれを活用するための方法に関する考案もしくは助言の業務。自ら分析や設計を行うものはシステムエンジニアに含まれる。
⑧「インテリアコーディネイター」
→建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務。施工、図面や提案書の清書および模型の作製のみを行う業務、家具販売店等において一定の時間帯を設定して行う相談業務は含まれない。
⑨「ゲームクリエイター」
→ゲーム用ソフトウェアにおけるシナリオ作成(全体構想)、映像制作、音響制作の業務。他人の具体的指示に基づくプログラミングの業務や創作されたソフトウェアに基づき単にCD-ROM等の製品の製造を行う者は含まれない。
⑩「証券アナリスト」
→有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務。
⑪「金融商品開発職」
→金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務。
⑫「大学の教授、助教授または講師」
→学校教育法に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)。
⑬「国家資格による専門職」
→公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士の業務。ちなみに、社会保険労務士や司法書士、行政書士は含まれません…。

2.専門業務型裁量労働制が適用された場合の労働時間の計算手順について。

専門業務型裁量労働制が導入されれば、残業代が一切必要なくなるというように捉えられがちですが、正しくは所定労働日(労使協定の定めにより所定外休日も可能)の労働時間が労使協定で定めた時間とみなされるということになります。専門業務型裁量労働制による労働時間計算の概念は以下の通りです。

0時5時9時18時22時  24時

(法定休日)
+
(160%)
実労働時間により法定休日勤務手当 (135%) を計算+
(160%)
実労働時間により深夜勤務手当(25%)を計算実労働時間にかかわらず、労使協定で定めた労働時間を労働したものとみなす。(25%)

(所定休日)
/
(150%/25%)
法定時間外労働(125%)となる。労使協定で定めた労働時間を労働したものとみなすことも可能。/
(150%/25%)
① 所定労働日の労働時間の計算

専門業務型裁量労働制が適用されると、まず、所定労働日(週休2日の場合、残りの5日)の労働時間を実際の労働時間にかかわらず、労使協定で定めた労働時間を勤務したものとみなします。協定に定めた労働時間が1日の法定労働時間(8時間)を超える場合、超えた時間は時間外労働、つまり残業扱いとなります。

② 深夜残業時間の計算

深夜勤務(22:00~翌5:00)については専門業務型裁量労働制の適用はなく、みなし労働時間にかかわらず、実労働時間の把握を行い、通常通り、深夜勤務手当を支払う必要があります。

③ 法定休日以外の所定休日に労働させる場合

つぎに、法定休日以外の所定休日(週休2日の場合、休日の1日目)の労働時間をも専門業務型裁量労働制による労使協定により、定めることができます。この際、他の労働時間と合計した週の労働時間が法定労働時間(40時間)を超える場合、超えた時間は時間外労働、つまり残業扱いとなります。

④ 法定休日に労働させる場合

法定休日(週休2日の場合、最後の1日)に労働させる場合、専門業務型裁量労働制の対象とはならず、実労働時間により休日労働として割増賃金を計算することになります。

3.専門業務型裁量労働制を残業代のカットに用いる手法とは。

① 所定労働日の労働時間を何時間と協定するのか

所定労働日の労働時間を1日8時間と協定すれば、深夜残業とならない限り残業代の問題は生じないこととなります。そのため、実際に勤務すると見込まれる労働時間より相当短かい時間で労使協定を締結してしまうということは良くみられます。これは労働者側が労働時間のディスカウントに同意するということに他ならず、経済合理性の面で考えるとおかしい現象なのですが、封建主義的な慣行によりまかり通ってしまうようです。あまり実際に労働時間とかけ離れた不合理な労使協定が締結されていると、のちのちその法的な効力について争われるケースもあるので、注意が必要です。

② みなし残業(固定残業代)をセットする

専門業務型裁量労働制を導入した場合、通常は所定休日(週5日制であれば残りの2日)に勤務をした場合にはじめて残業代が生じることになりますが、そこでみなし残業(固定残業代)を労働契約にセットすることでその時間分の残業代を毎月の給与に含むものとしてしまうことも可能ではあります。36協定によって社員に残業させることのできる時間は厚生労働省の基準により月に45時間までとされており、みなし残業および固定残業代の導入により残業代の問題なく、最大5~6日の休日勤務を行わせることが可能となります。なお、これは45時間以内の残業となるため長時間残業とは言いませんが、平日の実労働時間によっては「長時間労働」となり、過労の問題が生じる可能性があるため、積極的にお勧めするものではありません。

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執筆者 社会保険労務士 山本多聞
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