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企画業務型裁量労働制の適用拡大はいつから?

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Q.当社の営業職社員に対し、企画業務型裁量労働制を適用することはできないでしょうか。法人に対する弊社製品およびサービスの提案営業を行っています。 外回りと社内業務が半々のため、勤務時間の管理がルーズになりがちとなり、のちのち残業代をまとめて請求されないかと心配しています。なお、給与は基本給と45時間分の定額残業代、および営業成果に対するインセンティブを支給しています。
A.外回りも多い営業職というと、まず、事業場外のみなし労働時間制の適用を考えるところですが、業務の内容や勤務状況によっては企画業務型裁量労働制の対象業務とした方が有利な場合があります。いずれとすべきかは簡単に判断を下すことはできず、対象者の勤務状況をタイムカードなどで確認するとともに、御社における提案営業の業務が企画業務型裁量労働制または事業場外のみなし労働時間制の対象業務となるかを、下記により、検討した上で判断することとなります。 ちなみに、企画業務型裁量労働制については法改正により法人向けの提案営業(ソリューション型営業)に適用拡大となる予定でしたが、「働き方改革推進法案」に盛り込まれなかったため、次回法案が国会に提出される2020年以降となる見通しです。

1.現行において、企画業務型裁量労働制を適用するために考慮すべき事項とは。

① 企画業務型裁量労働制が適用となる業務
業務の場所本社、本店、または事業運営に大きな影響を及ぼす計画の策定を行う支社、支店において行う業務であること。
業務の内容会社の運営についての企画、立案、調査及び分析の業務であり、業務の遂行方法に関し会社側が具体的な指示をしないもの(※法改正により適用拡大の可能性あり)。
かつ、下記、対象業務(例)のいずれかに該当すること。
1.「経営企画の業務」
→経営状態・経営環境について調査及び分析を行い、経営に関する計画を策定する業務、または、現行の社内組織の問題点やそのあり方等について調査及び分析を行い、新たな社内組織を編成する業務。経営会議のために行う庶務の業務は含まれない。
2.「人事労務(企画)の業務」
→現行の人事制度の問題点やそのあり方について調査及び分析を行い、新たな人事制度を策定する業務、または、業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査及び分析を行い、社員の教育研修計画を策定する業務。給与計算、社会保険手続き、採用や研修の実施は含まれない。
3.「財務経理(企画)の業務」
→会社の財務状態について調査及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務。財務諸表・会計帳簿の作成や租税の申告および納付の業務、予算・決算にかかる計算の業務は含まれない。
4.「広報(企画)の業務」
→効果的な広報手法について調査及び分析を行い、広報を企画・立案する業務。広報誌の原稿校正業務については含まれない。
5.「営業企画の業務」
→営業成績や営業活動上の問題点について調査及び分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務。現在のところ、個別の営業活動は含まれない(※法改正により適用拡大の可能性あり)。
6.「生産企画の業務」
→生産効率や原材料等に係る市場の動向について調査及び分析を行い、原材料の調達計画を含め全社的な生産計画を策定する業務。個別の製造、物品の買い付けは含まれない。
対象者の
職務経験
少なくとも大学等を卒業して3~5年は必要とされる。
② 企画業務型裁量労働制の実施に伴い、会社が執るべき手続きと健康確保の措置。

先日、企画業務型裁量労働制のもとで働く労働者が心筋梗塞で死亡した件を三田労働基準監督署が調査したところ、直近に月108時間の残業があったとして「労災」との認定が行われました。過労による労災として認定されたということですので、会社は、社員に対する安全配慮義務違反があったとして、遺族から損害賠償や「ブラック企業」として社会的責任を追及されることもありえます。このようなことがないよう、企画業務型裁量労働制の導入に当たっては、厳しい要件が課せられています。手続きにおいては、対象となる労働者本人の同意を得て、労使各半数により構成される労使委員会の5分の4以上の多数により裁量労働制を実施する対象者の範囲や健康確保のためのケアの措置を定め、労働基準監督署へ届け出を行うこととされ、関係者のコンセンサスを一通り求める内容となっております。また、時間配分などに関して具体的な指示を行わないという企画業務型裁量労働制の趣旨にかかわらず、会社は対象労働者の勤務状況をタイムカードなどで把握することが求められます。これにより対象労働者の過労などを予防し、会社は健康確保のための措置を講じるとともに、苦情処理の窓口を設け、それらの実施状況については定期的に労働基準監督署に届け出なければなりません。

2.今後の企画業務型裁量労働制の制度改正の動向。

① 対象業務の拡大

企画業務型裁量労働制の対象となる業務とは「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査、分析にかかるもの」とされていますが、労働基準法改正案においては、「事業の運営に関する事項について繰り返し、企画、立案、調査、分析を行い、かつ、これらの成果を活用し、当該事項の実施を管理するとともにその実施状況の評価を行う業務」とされており、PDCA(PLAN Do See Action)のPDCまでしか認められなかったものが、Aを含んだプレイングマネジャー的な職務まで認められるようになりそうです。
また、「法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、これらの成果を活用した商品の販売または役務の提供に係る当該顧客との契約の締結の勧誘または締結を行う業務」ということで、従来では対象とならなかった法人向けの提案営業(ソリューション営業)が企画業務型裁量労働制の対象として認められるようになりそうです。既製品のラインアップを前提に単純に顧客に提案していくような営業や御用聞き的なものはこれに含まれないと考えられます。

② 健康確保のための措置の拡充、定期報告の簡素化

企画業務型裁量労働制についても、今後、労働時間に関する規制が厳格化される見込みであり、長時間労働を行った場合の面接指導の実施、深夜業の回数の制限、勤務間インターバル、一定期間における労働時間の上限の設定などの措置の導入が検討されています。
また、現在、検討されている内容によれば、有給休暇の付与や健康診断の実施などについても規定され、健康確保のための措置についても厳格化される見込みです。一方で、今までは労働基準監督署長に対して、定期的に対象労働者の労働時間の状況および健康福祉の確保措置の実施状況を報告すべきことになっていましたが、現在検討されている内容によれば、定期報告は6ヶ月後に1回のみ行い、その後は書類の保存を行うことで事足りるものとされており、こちらは手続きが簡素化される見通しです。

 
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執筆者 社会保険労務士 山本多聞
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