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働き方改革関連法による2019年4月労働基準法の改正の内容とは?

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Q.働き方改革関連法案が成立し、2019年4月1日より施行されるとのことですが、企業としては、従業員に対して具体的にどのような対応を求められるのでしょうか。
A.「働き方改革関連法」とは、昨今問題となっている長時間労働の是正や非正規労働者と正社員との不合理な格差の改善をテーマとする一連の法改正をいい、労働基準法、労働安全衛生法、労働時間設定改善法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法等が改正されることとなります(本ホームページでは労働基準法の改正を中心に取り扱います。)。
具体的な対応が求められるものとしては、特別条項により実質青天井であった時間外労働の上限が規制されること、月60時間を超える時間外労働を行った場合の賃金の割増率が中小企業においても25%から50%になること、年次有給休暇のうち年5日の消化が義務付けられること、があります。
また、規制が緩和されるものとしては、フレックスタイム制の清算期間が最長1ヶ月から3ヶ月に延長されること、高度プロフェッショナル制度により高度専門職(年収1,075万円以上)の労働時間にとらわれない働き方が可能となること、があります。
労働基準法の改正施行日は2019年4月1日となりますが、中小事業主に対する時間外労働の上限の適用(原則として月45時間、年360時間)は2020年4月1日、中小事業主に対する月60時間を超える時間外労働の割増率の猶予措置の廃止(25%→50%)は2023年4月1日となります。

1.働き方改革関連法により厳しくなる労働時間の規制

① 労働基準法の改正により残業時間の上限が設定される

1日8時間、1週40時間(特例措置対象事業場については44時間)の法定労働時間を超えて従業員に労働をさせる場合には、必ず時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)を締結して労働基準監督署に届け出る必要があります。
この36協定による労働時間の限度が、以下の通り、これまで「厚生労働省の通達」により定められていましたが、2019年4月1日の労働基準法の改正(※中小事業主は2020年4月1日)により、労働基準法に定められ、より拘束力の強いものとなり、これに違反する残業は認められないこととなります。

1. 一般労働者の場合

期間残業時間の上限
1週間15時間
2週間27時間
4週間43時間
1ヶ月45時間
2ヶ月81時間
3ヶ月120時間
1年間360時間

2. 対象期間が3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者の場合

期間残業時間の上限
1週間14時間
2週間25時間
4週間40時間
1ヶ月42時間
2ヶ月75時間
3ヶ月110時間
1年間320時間

なお、一時的に必要のある場合、大規模なトラブルの発生や納期が特に逼迫したときなど、特別の場合の定め(特別条項)を36協定に盛り込んでおくことにより、年6回を限度として、上記の労働時間を越え、特別条項に定める時間まで残業を行わせることが可能となります。
特別条項による労働時間の延長の限度はこれまで定められておらず、実質青天井となっておりましたが、2019年4月1日の労働基準法の改正により、以下の通りとなり、これを上回る残業を行わせることはできません。
ちなみに、特別条項による労働時間の延長を行う場合は休日労働の時間も含めてカウントするため、休日労働が多い場合、実質的に労働時間を多くとることができないといったことも考えられます。
また、一度特別条項を発動すると、向こう6ヶ月に渡って時間外労働のカウントに休日労働を含めて計算することになりますので、注意が必要です(あくまで労働時間の限度に関する制限であって、残業代の計算には関わりありません)。

期間残業時間の上限
1ヶ月100時間未満
(ただし、2~6ヶ月目まで80時間未満)
1年間720時間

※ 前記に関わらず、以下の業務は当面労働時間規制の適用が除外されます。

・新たな技術、商品または役務の研究開発にかかる業務
・工作物の建設の事業(2024年3月31日までの期間を対象に締結した36協定が対象)
・自動車の運転の業務(2024年3月31日までの期間を対象に締結した36協定が対象)、上記期間の経過後も特別条項による労働時間の延長に関する規定は原則として適用せず、1年の時間外労働の上限を960時間とされるのみとなります。
・医業に従事する医師(2024年3月31日までの期間を対象に締結した36協定が対象)

上記期間の経過後も「医療提供体制の確保に必要なものとして厚生労働省令で定める者」については別に定めるものとされます。

② 月60時間を超える法定時間外労働に対する割増賃金の猶予措置が廃止される

過去の労働基準法改正により、従業員に1ヶ月60時間を超える法定時間外労働を行わせる場合、50%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられることとなっておりましたが、例外として、以下の規模の中小事業主については「当面の間適用しない」とされていました。しかし、2019年4月1日に施行される労働基準法の改正により、中小企業の割増賃金にかかる猶予期間の終了が2023年4月1日となり、いよいよ中小企業にも50%の割増率が適用されることになりました。

小売業資本金(または出資)の額が 5,000 万円以下
または常時使用する労働者の数が 50 人以下
サービス業資本金(または出資)の額が 5,000 万円以下
または常時使用する労働者の数が 100 人以下
卸売業資本金(または出資)の額が 1 億円以下
または常時使用する労働者の数が 100 人以下
その他の業種資本金(または出資)の額が3億円以下
または常時使用する労働者の数が300人以下

法改正により、残業時間に対応した法定割増賃金率は企業規模にかかわらず、以下の通りとなります。

残業時間法定割増賃金率
法定内(所定外)残業通常の労働時間と合計し、
1日 8時間、 1週 40時間労働の範囲
時間給 ×100 %
法定外残業1 ヶ月 45 時間以内時間給 ×125 %
1 月 45 時間を超え
60 時間以内
時間給 ×125 %
(これを超える率とするよう努めること)
1 ヶ月 60 時間超え時間給 ×150 %
③ 1年に5日の年次有給休暇の付与が義務付けられる

2019年4月1日施行の労働基準法の改正により、同日以降に年次有給休暇が10日以上付与された従業員については付与日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられます。
この5日については必ずしも会社側から時季を指定して取得させなければならないというものではなく、本人の申請により取得されたもの、および、労使協定により計画的に付与されたものも含まれるため、たとえば、付与から半年の間は本人の意思にまかせ、半年を経過した時点で5日に満たない日数分を指定して取得してもらうという処理も有効となります。
ちなみに、今後は、従業員ごとに入社から6ヶ月、以降は1年ごとに付与をおこない、2年で消滅するという従来の有休管理に加え、付与から1年ごとに5日の取得を行わせなければなりません。有休付与のタイミングが入社日によってまちまちとなると、管理が煩雑となるため、いずれかのタイミングで付与を繰り上げ、すべての従業員を年1回にまとめて付与を行うという措置も有効です。

(例)有給休暇付与のタイミングを4月1日に統一する場合

有給休暇付与のタイミングを4月1日に統一する場合

④ 労働時間の把握義務の強化および健康管理措置の強化

働き方改革関連法の一環として、2019年4月1日施行の労働安全衛生法の改正により長時間労働者に対する医師の面談に関する義務が強化されることとなり、これまで労働時間把握の義務が規定されていなかった管理監督者、および、みなし労働時間制の対象者について、健康管理を目的とするものとはなりますが、客観的な方法で労働時間を把握しなければならないこととなります。これはあくまで健康管理を目的とする記録であり、賃金を計算する目的の記録ではありませんが、管理監督者またはみなし労働時間制の適用を誤ると一転、賃金計算の根拠となるため、注意が必要です。

2019年4月1日より、医師の面談が義務づけられるのは以下のケースとなります。
・一般の労働者
法定時間外労働が1ヶ月に80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者が自ら申し出たとき。
(医師の意見により求められる対応)
就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など

・新たな技術、商品または役務の研究開発に従事する業務
休日労働を含め、1週40時間を超える労働時間が1ヶ月に100時間を超える労働者
(医師の意見により求められる対応)
就業場所の変更、職務内容の変更、有給休暇(年休をのぞく)の付与、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など

・高度プロフェッショナル制度の対象者
健康管理時間(労働時間)が1週40時間を超える時間が1ヶ月に100時間を超える場合
(医師の意見により求められる対応)
職務内容の変更、有給休暇(年休をのぞく)の付与、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など

2.働き方改革関連法により緩くなる労働時間の規制

① フレックスタイム制の清算期間が3ヶ月に延長される

フレックスタイム制は一般的に従業員が勤務時間を選択する制度とされますが、会社にとっても、労働時間の計算を1日単位でなく、あらかじめ定めた清算期間で行うことができるため、残業時間を圧縮する効果が期待できる制度といえます。2019年4月の労働基準法改正により、これまで1ヶ月だった清算期間の上限が3ヶ月へ延長し、月をまたいだ労働時間の融通が利くようになるため、残業時間圧縮の効果がさらに強力になります。
ただし、残業代の計算については清算期間中の各月において週50時間(所定労働時間が1日8時間、週5日勤務の場合1日2時間の残業相当)を超えた時間を法定時間外労働として清算し、清算期間の終了時に総労働時間が法定労働時間を上回った場合、先に清算が終わった部分を除いて清算することになります。

清算期間における労働時間の合計が以下の時間までであれば、法定時間外労働とはなりません(フレキシブルタイムに前後する早出あるいは残業を行わせた場合を除く)。残業代の圧縮を狙うのであれば、清算期間における総労働時間を法定労働時間の合計とするような定めが有効です。

1ヶ月(清算期間)の歴日数法定労働時間の合計
31 日177.1 時間
30 日171.4 時間
29 日165.7 時間
28 日160.0 時間

※ 清算期間が 2 ヶ月、 3 ヶ月となる場合はこれらの合計となります。

ちなみに、清算期間が1ヶ月を超える場合には、フレックスタイム制の導入に際して労働基準監督署への届出が必要となります(1ヶ月以内の場合は従来どおり、労働基準監督署への届出は必要ありません)。

② 適用範囲が限定される高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度は、2019年4月1日の労働基準法改正により創設される制度で、「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務」(※詳細下記)については、労働基準法第32条による労働時間の制約を外れるというものです。平たく申し上げると、賃金計算のために労働時間を用いないため、残業代の支給という概念はなく、また、週 40 時間を超える労働も、 1 年に 104 日以上の休日を与える必要があることを除けば、およそ青天井で認められます。会社側にとっては非常に有利な制度ですが、対象となる業務および労働者については以下の通り、限定的となっております。

高度プロフェッショナル制度の対象となる業務

① 以下のいずれかに該当する業務であること

・金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発

・資産運用(指図を含む)の業務または有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他取引の業務または投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引(ディーリング)

・有価証券市場における相場等の動向または有価証券の価値等の分析、評価またはこれに基づく投資に関する助言(アナリスト)

・顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査または分析およびこれに基づく当該事項に関する考案または助言(コンサルタント)

・新たな技術、商品または役務の研究開発

② 当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示(以下に例示)を受けて行うものでないこと

・出勤時間の指定等始業・終業時間や深夜・休日労働等労働時間に関する業務命令や指示

・労働者の働く時間帯や時間配分に関する裁量を失わせるような成果・業務量の要求や納期・期限の設定

・特定の日時を指定して会議に出席することを一方的に義務付けること

・作業工程、作業手順等の日々のスケジュールに関する指示

高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者
・年収1,075万円以上
・満18歳以上で、制度適用について同意した者

なお、高度プロフェッショナル制度の導入に際しては、労使委員会で決議を行い、労働基準監督署へ届け出ることが要件となります。

高度プロフェッショナル制度の運用の際には、以下の措置が求められます。

必須の措置
・1年を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を与えること
・客観的な方法※により、事業場内にいた時間および事業場外において労働した時間(健康管理時間)を把握すること

※事業場内においてはタイムレコーダーの打刻記録、勤怠管理システムのログイン記録、ICカードによる入退勤記録など。事業場外においては原則として事業場内と同様であるが、端末より勤怠管理システムにログインできない場合に限り、自己申告が認められる。

いずれか1つを選択して実施しなければならない措置
・勤務と勤務の間に11時間以上の休息時間(勤務間インターバル)を確保し、かつ、1ヶ月の深夜業は4回以内とすること
・1週40時間を超える健康管理時間が1ヶ月100時間、3ヶ月240時間を超えないこと
・1年に1回以上の継続した2週間の休日(労働者の請求により2回以上の継続した1週間の休日)を与えること(年次有給休暇を除く)

 
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執筆者 社会保険労務士 山本多聞
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