残業代 残業時間 トラブル解決! 残業にまつわる様々な問題に対策!解決!

突然の「未払い残業代請求」に会社はどう動くべきか?内容証明の受取から交渉、和解・合意書の作成までの実務フロー

  • HOME »
  • 突然の「未払い残業代請求」に会社はどう動くべきか?内容証明の受取から交渉、和解・合意書の作成までの実務フロー

退職した元従業員やその代理人弁護士から、突然「未払い残業代を支払え」という内容証明郵便が届く。経営者や人事担当者にとって、これほど頭の痛い問題はありません。近年、インターネットの普及により「残業代請求」に関する情報が溢れ、着手金無料や完全成功報酬で引き受ける弁護士事務所も増えたため、こうした労働トラブルはどの企業にも起こりうる身近な経営リスクとなっています。

請求が届いた際、会社側が「どうせ法外な要求だろう」と高を括って誤った対応をとってしまうと、のちのち労働審判や裁判へと発展し、本来払わなくてもよかったはずの多額のペナルティまで背負い込むことになりかねません。

本記事では、会社宛に内容証明郵便が届いた際の正しい初動対応から、弁護士等が提示してくる請求額の精査ポイント、民法改正により延長された時効への対策、そして和解によってトラブルを完全に終結させるための「合意書」の作り方まで、会社側が取るべき実務フローを徹底解説します。

退職者や弁護士から内容証明郵便が届いた際のNG行動(無視、安易な回答)と初動対応

絶対にやってはいけないNG行動は「放置」と「安易な承認」

 ある日突然、弁護士名義で未払い残業代の請求書が届いた場合、真っ先にやってはいけないのが「無視・放置」をすることです。従業員や弁護士からの請求を無視し続けると、相手方は会社側に交渉の意思がないと判断し、労働基準監督署への申告や労働審判、訴訟(裁判)といった強硬な法的手段へと移行する可能性が高まります。

また、請求書には多くの場合「本書面到着後、7日以内に未払い残業代〇〇万円を支払え」、あるいは「7日以内に賃金台帳などの資料を開示せよ」といった一方的な期限が設定されています。これに対して慌ててしまい、「とりあえず少しだけなら支払う」「確かに未払いがあったかもしれない」と安易に認めてしまうのも大変危険です。会社側が1円でも未払いの存在を認めてしまうと、法的には「債務の承認」とみなされ、後述する「時効の中断(更新)」を引き起こし、時効で消滅していたはずの過去の未払い分まで全額支払わなければならなくなるリスクがあるためです。事実関係が不明な段階での安易な回答は避けましょう。

弁護士が介入している場合、本人への直接連絡は控える

 弁護士から「受任通知書(本人の代理人として未払い残業代の請求交渉を行う旨の書面)」が届いている場合、法律上の交渉窓口はすべてその弁護士となります。 経営者としては「あんなに目をかけて育ててやったのに」という感情から、元従業員本人に直接電話をして説得しようとしたり、自宅を訪問したりしがちですが、これは控えるべきです。本人への直接の接触は、相手の弁護士から不当な圧力・強要と受け取られかねず、会社側に対する心証を著しく悪化させます。

資料開示請求に対する正しい対応と交渉への持ち込み方

弁護士からの内容証明には、未払い額を確定させるための資料(タイムカード、出勤簿、賃金台帳、就業規則など)の開示請求が含まれていることが一般的です。 会社側としては「なぜ退職者のために資料を出さなければならないのか」と反発したくなりますが、どのみち裁判になれば証拠として開示義務が生じるため、交渉の材料として必要な範囲で開示に応じるのが賢明です。ただし、相手方が請求していない不要な資料まで手厚く開示する必要はなく、会社側であらかじめ内容をよく吟味したもののみを郵送するようにしましょう。 もし「7日以内」という期限での準備が間に合わない場合は、相手方の弁護士へ「資料の精査に時間を要するため、回答期限を〇月〇日まで延長してほしい」と申し入れることが可能です。真摯に対応する姿勢を見せつつ、自社の防衛準備を整える時間を作りましょう。

請求額の精査ポイント(労働時間の実態、休憩時間、管理監督者性など)

弁護士からの「請求額」を鵜呑みにしてはいけない

資料を開示した後、弁護士事務所から具体的な残業代の請求書(計算書)が送られてきますが、そこに記載された金額を見て驚く経営者は少なくありません。なぜなら、弁護士が提示してくる請求額は、従業員側の主張する労働時間や基礎賃金をベースに、労働者側に最も有利な計算式ではじき出した「最大値」であることがほとんどだからです。 会社側はこの金額を鵜呑みにせず、自社で保管しているタイムカードや日報などの客観的資料と照らし合わせ、以下のポイントを中心に徹底的に「減額」のための精査と反論を行う必要があります。

労働時間と休憩時間の「ボーダー」を見極める

相手の計算書では、タイムカードの「打刻から打刻までの時間」がすべて労働時間としてカウントされているケースが多々あります。しかし、実際に会社に滞在していた時間のすべてが、法律上の労働時間として認められるわけではありません。 例えば、業務から完全に解放されて自由に過ごせる「休憩時間」が適切に確保されていたのであれば、その時間は労働時間から除外できます。また、始業前の「朝礼」や「掃除」「着替え」の時間についても、会社が参加を義務付けていない(不参加でもペナルティがない)任意のものであれば、労働時間には該当しないと反論できる可能性があります。一方で、電話番や来客待ちなど、いつでも業務に対応しなければならない「手待ち時間」は労働時間とみなされやすいため、実態調査が不可欠です。

「管理監督者」や「固定残業代」の適用による反論

請求をしてきた社員が、課長や店長などの役職者であった場合、労働基準法上の「管理監督者」に該当すれば、会社は残業代(深夜労働を除く)の支払い義務を負いません。ただし、管理監督者として認められるためには、経営者と一体的な立場にあるか、労働時間に関する裁量があるか、それにふさわしい高い待遇(役職手当や年俸)を受けているか、といった非常に厳しい条件をクリアする必要があります。単なる「名ばかり管理職」であった場合はこの反論は通用しません。 また、毎月の給与に「みなし残業代(固定残業代)」を含めて支給していた場合、就業規則や雇用契約書で「金額」と「時間数」が明確に区分されており、かつ超過分の差額が適正に支払われていれば、すでに支給済みの残業代として請求額から差し引く(控除する)ことができます。

時効(当面3年、将来5年)の援用と、交渉・労働審判・裁判の解決プロセス

民法改正による残業代請求の「時効延長」リスク

会社が残業代を請求された際に、必ず主張しなければならないのが「消滅時効の援用」です。これまでは労働基準法により、未払い残業代(賃金)の時効は「2年」とされてきました。つまり、会社は時効を主張すれば、2年より前の過去に発生した残業代については支払う義務を免れることができました。 しかし、民法改正およびそれに伴う労働基準法改正により、未払い残業代の消滅時効は当面の間「3年」へと延長され、将来的には「5年」となることが予定されています。これにより、従業員側は過去3年分もの残業代を遡って請求できるようになり、会社側の財務リスクは大幅に跳ね上がっています。会社側は、時効期間を正確に計算し、時効が成立している部分については断固として支払いを拒否する姿勢が求められます。

解決に向けた交渉・労働審判・裁判のプロセス

請求額の精査と反論材料の整理ができたら、いよいよ相手方との交渉がスタートします。

  1. 任意の示談交渉:
    双方の主張を書面等でぶつけ合い、妥協点を探ります。会社側の反論が的を射ていれば、相手方も裁判に至っての長期化や敗訴リスクを考慮し、請求額から大幅に減額された「和解金(解決金)」の支払いで合意に達することも少なくありません。
  2. 労働組合(ユニオン)との団体交渉:
    弁護士ではなく、退職者が社外の合同労組(ユニオン)に駆け込んだ場合は、労働組合から団体交渉を申し入れられます。会社は正当な理由なく交渉を拒否できず、街宣活動などで営業活動を妨げられるリスクもあるため、事実に基づいて淡々と交渉に応じる必要があります。
  3. 労働審判・本裁判への移行:
    交渉で折り合いがつかない場合、舞台は裁判所へと移ります。多くの場合、従業員側は手続きが迅速な(原則3回以内の期日、およそ2ヶ月で結論が出る)「労働審判」を選択します。労働審判は本裁判に比べて時間とコストの負担が軽く、会社名が世間に公表されるリスクも低いため、会社側としてもこの労働審判の段階で「調停(話し合いによる和解)」を成立させ、決着を図るのが現実的な解決プロセスといえます。

トラブル再燃を防ぐための「清算条項」と「口外禁止条項」を盛り込んだ合意書の作り方

合意書作成における「事実認識」の落とし穴

交渉や労働審判の結果、会社が一定の金額を支払うことで合意に至った場合、必ず当事者間で「合意書(和解契約書)」を取り交わします。この合意書の作成は、トラブルの再燃を防ぐための極めて重要な実務です。 まず注意すべきは、合意書の中に「未払い残業代として〇〇万円を支払う」というような、会社側に不利な事実認識を記載してはいけないという点です。このような記載は、会社が労働基準法違反(未払い)を自ら認めたという強力な証拠になってしまいます。支払う金銭の名目は、あくまで労使間の紛争を終結させるための「解決金」や「和解金」とし、残業代の未払いがあったという事実自体はぼかしておくのが実務上の定石です。

連鎖的な請求(ドミノ倒し)を防ぐ「秘密保持条項(口外禁止条項)」

退職者とのトラブルで最も恐ろしいのは、和解金を手にした退職者が、在籍している元同僚や他の退職者に「弁護士に頼んで会社を訴えたら、数百万円もらえたぞ」と自慢げに話してしまうことです。これが引き金となり、他の従業員からも次々と残業代請求が押し寄せる「ドミノ倒し」状態に陥る企業が後を絶ちません。 こうした事態を防ぐため、合意書には必ず「本件の合意が成立した事実、およびその内容(和解金の額など)を、第三者に一切口外しない」という「秘密保持条項(口外禁止条項)」を厳格に盛り込み、相手に守秘義務を負わせる必要があります。

将来の禍根を断つ「清算条項」と「違法行為不存在の誓約」

さらに、トラブルを完全に終わらせるために「清算条項」が必須となります。これは、「本件に関し、会社と従業員の間には、本合意書に定めるもののほか、いかなる権利義務関係も存在しないことを相互に確認する」という一文です。この条項を入れることで、残業代だけでなく、退職金や未消化の有給休暇、パワハラによる慰謝料など、在職中に生じたあらゆる権利関係が包括的に清算されたことになり、後日別の理由で訴えられるリスクを遮断できます。

しかし、清算条項には思わぬ落とし穴があります。もし退職後に、その元従業員が在職中に会社の経費を「横領」していた事実が発覚したとしても、清算条項を結んでしまっていると、会社から元従業員に対して損害賠償を請求できなくなってしまうのです。 これを防ぐための防衛策として、「元従業員は、在職中に横領や情報漏洩など、会社に損害を及ぼす違法行為を行っていないことを誓約する」という「違法行為不存在の誓約」を合意書に設けます。そして、「もし後日、この誓約に反する違法行為が発覚した場合は、会社は損害賠償請求を行うことができる」と明記しておくことで、万が一の際のリスクヘッジが可能となります。

まとめ

突然の残業代請求に対しては、感情的な対応や放置は厳禁です。弁護士等からの法的な請求には、タイムカード等の客観的な証拠をもとに冷静に「労働時間の精査」と「時効の援用」を行い、支払うべき金額を適正な水準まで引き下げる交渉が求められます。 そして最終的には、口外禁止条項や清算条項、違法行為不存在の誓約など、自社を守るための防衛策を網羅した「合意書」を作成することで、初めて真のトラブル解決に至ります。請求が来てから慌てることのないよう、対応フローを正しく理解し、必要に応じて社会保険労務士や弁護士などの専門家のサポートを受けながら、慎重に対処を進めてください。

初回無料相談実施中!

残業トラブルで不安、お困りの社長様・担当者様 TEL 03-5778-9817 初回無料相談 実施中!※関東限定

無料相談実施中
セミナー情報
PAGETOP
Copyright © 残業代 残業時間 トラブル解決! All Rights Reserved.